理事長 増野 匡彦
薬剤師養成を目的とする6年制薬学教育では、薬学生が病院や薬局で薬剤師の仕事を経験する参加型の実務実習(臨床実習)を行います。実務実習では、薬剤師が担う多岐にわたる仕事を、学生が医療現場を含む多様な場で指導を受けながら学ぶことによって、実践能力と同時に倫理観や使命感を身に付けていきます。しかしながら、薬学生は薬剤師の資格を有していませんので、実務実習を行うにあたって、一人ひとりの薬学生が基礎及び専門知識・技能・態度が十分なレベルまで到達していることを確認し、社会に保証する必要があります。薬学共用試験はこのための試験です。この薬学共用試験を厳格、かつ公平、公正に実施する組織として、薬学共用試験センターが発足しました。
薬学共用試験で基準点に到達した学生の能力を、大学が責任を持って認定することが、実務実習を行う上での条件になっています。この「基準点」は、全国薬科大学長・薬学部長会議で合意されたもので、すべての大学は「基準点」以上で合否判定を行なっています。
薬学共用試験では、実務実習に必要とされる基本的知識をコンピューターによる客観試験(CBT)で、薬学生が実務実習を始める前に備えるべき基本的技能・態度を客観的臨床能力試験(OSCE)で評価します。CBTの問題は学生ごとに異なり、またOSCEの試験課題は大学ごとに異なりますが、全て薬学共用試験センターで吟味された問題や課題が用いられ、学生間あるいは大学間で難易度の差はありません。全国の国公私立薬科大学・薬学部教員のみならず、日本薬剤師会や日本病院薬剤師会から多くの薬剤師の方にご協力いただき、CBTの問題は毎年更新され、OSCEの課題は臨床で求められる内容を取り入れるように常に見直しがされています。各大学におけるCBTやOSCEの実施に当たっては、薬学共用試験センターからモニター員が派遣され、試験の公正性を確保しています。また、各大学はホームページで薬学共用試験の合格者数、合格基準を公表しており、薬学共用試験の透明性を担保しています。
薬学共用試験で一定レベルに到達した薬学生が実務実習に参加しますが、薬剤師資格を持たない薬学生が薬剤師と同様の行為を行うためには、実習受入施設や医療スタッフのご協力のみならず、患者の方々やご家族の方々のご理解が必須です。薬学共用試験センターは社会に貢献できる薬剤師養成のために尽力して参りますので、これからも薬学共用試験センターの活動にご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
令和6年9月25日
特定非営利活動法人 薬学共用試験センター
理事長 増野 匡彦